こちらは、旭川の病院紹介雑誌『ホームドクター』2017年版の医療情報コラムに掲載された内容です。 逆食・呑酸でお困りの方は、御一読ください。
『逆流性食道炎(胃食道逆流症)について』
逆流性食道炎(略して“逆食”といいます。)は、正確には胃食道逆流症の一つで、胃酸が食道に逆流することで起こり、食道の粘膜にただれや潰瘍が認められる状態を言います。
胃酸の主成分は、胃が分泌する強力な塩酸ですが、胃は自らが胃酸によって溶かされて潰瘍になるのを防ぐために、ドロドロの粘液を大量に分泌し、胃の壁をコーティングしています。しかし、ストレス、ピロリ菌、たばこ、アルコール、あるいは痛み止めなどの薬のせいで粘液の分泌が落ちると、胃の壁がむき出しとなり、自ら胃酸に腐食されて潰瘍を発生させてしまいます。これが胃潰瘍です。
一方、食道は胃に比べて粘液の分泌が弱いため、食道の壁はある程度むき出し状態であり、胃酸が逆流してくるとすぐにただれて炎症を起こしてしまいます。通常は胃酸が逆流しないように、食道と位の境目は横隔膜の筋肉や、下部食道括約筋という壁の筋肉によって締まっていますが、加齢にともない胃と食道の間の締め付けが緩んでくると胃酸が逆流し、食道がただれた状態になってしまうわけです。
逆流の主な症状は、呑酸(どんさん)、胸やけ、飲み込んだ時の突っかかり感、酸っぱいものがあがってくる感じなどです。意外でしょうが、喘息のように夜中にしつこい咳で苦しんでいる方で、喘息や咳止めの薬を飲んでもよくならないという方の中には、横になって寝ている時に胃から逆流してきたものが気道の方に流れ込んでしまうために、夜中の咳という症状に表れている方も少なくはないのです。この場合は、胃薬で咳が止まるという何とも不思議なことが起こります。
診断は、基本的には内視鏡検査で行います。しかし、患者さんの中には内視鏡検査には抵抗があるという方も多く、まずは症状に応じて最適と考えられる胃薬から処方することもできます。もしもそれでも症状が改善されなければ、胃がんなどの可能性も無視できませんので、早期発見と適切な治療につなげるためにも内視鏡検査を行います。いずれにしても、受診してすぐに内視鏡検査を絶対にしなければならないということはありませんので、まずは安心して一度ご来院いただければと思います。
治療薬には、胃や食道の粘膜のコーティングを強化するようなタイプもありますが、最も適しているのは胃酸の分泌をおさえるタイプの薬です。H2ブロッカーは市販薬にもあり、よく知られていますが、病院で処方されるものに比べて低用量の場合もありますので、市販薬でよくならない場合には、病院に受診することをお勧めいたします。更に効果の安定した薬としてプロトンポンプ阻害薬( PPI ) がありますが、こちらは市販薬にはありません。このほかにも、内視鏡検査を受けた上でなければ処方できないこととなっていますが、胃や食道の不快感を改善してくれる新しいタイプの薬もあります。また漢方薬の中にも、胃を中心に消化管を活発に動かして元気にしてくれる薬があります。PPIでも満足度が上がらず、症状が強くて困っている方に漢方を追加しますと、劇的に症状が改善したとお喜びいただけることも多々あります。
予防には、まず食事は腹八分目、食べてすぐには横にならない、寝る前3時間はあまり食べない方がよいでしょう。また、脂肪分の多いものは胃酸の分泌を亢進させるので、逆流性食道炎にはよくないとも言われています。さらに、きついベルトや帯で体を締め付けたり、前かがみの姿勢を長く続けるなど腹圧の高い状態は、逆流の原因になるため注意が必要です。もちろん、たばこは胃の粘液の分泌を落し、胃潰瘍もできやすくなるほか、強いアルコールは粘液を洗い落としてしまうだけではなく、粘膜の表面細胞が脱水され、食道がんや咽頭がんの原因になることもありますのでご注意を。合わせて繰り返し発症する逆流性食道炎は、がん細胞(バレット食道がん)への変異を促してしまう場合もあるため、適切な治療が必要です。
気になる症状があってお悩みの方は、是非一度医療機関にご相談ください。
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