こちらは、グラフ旭川 2019年7月号の医療情報欄に掲載されたコラムです。
(アラカルト②は 同 8月号掲載 ) お時間のある時にぜひお読みください。
~漢方薬アラカルト ①~
飲んだことのある方、効果を実感したことのある方にとって、漢方薬は身近であり抵抗感がないでしょう。しかし、まだ漢方に触れ合ったことのない方には、あまりイメージがわかないかと思います。よくある疑問をまとめてみましたので、ぜひご一読下さい。
「漢方って中国のものでしょ?」
漢方医学は、奈良時代5世紀ころに中国から日本に伝わりました。確かに最初は輸入した本や生薬をそのまま使っていましたが、その後日本の風土の中で独自の進化をとげていきます。平安時代には日本最古の医学書である『医心方』が書かれ、江戸時代になると様々な流派も増え、さらに実践的になりました。しかし、明治時代になると政府の西洋医学推進政策により、漢方医学は急速に衰退しました。(西洋医学を学ばないと医師免許が取れないシステムになったためです。)
昭和になると、西洋医学を学んだ医師が再び漢方にも注目し再認識。さらに戦後、現在の粉末状漢方エキス製剤が登場し、更に便利になりました。最近では日本の漢方が、アメリカの大学からも有効成分やメカニズムについて研究されるようになり、英語の論文も増えています。
日本独自の進化と強調していますが、漢方薬の原料である生薬は現在でも多くは中国から輸入しています。最近では、安全・安定供給のために国産も増えており、北海道にも夕張などに生薬の栽培畑や備蓄庫があります。しかし、昔は高価で貴重な生薬や本を船で中国から輸入するしかありませんでしたので、薬もふんだんには使えない状況でした。そこで、先人たちが知恵を絞り、経験を積んで、日本人に合った配合で、無駄なく最小の量で効くように、長い年月をかけて試行錯誤した結果に生まれた究極のブレンド剤が現在の漢方なのです。
「漢方って苦くていやなんだよなぁ。」
先ほど、粉末状漢方エキス製剤と書きました。昔は、漢方薬局から買ってきた生薬をお湯で煎じたり、すりつぶしたりしないと薬として飲めませんでしたが、現在は生薬から煎じて抽出したエキスを、インスタントコーヒーのように粉末状に精製したものがメインとなっています。粉の形状が苦手な方は、お湯に溶かして薬ぜん茶のようにすすっていただくのもいいですし、お子様でしたらココア飲料に混ぜるとちょうど苦みがマッチしていいようです。ただ、面白いことに漢方はそれぞれ味が違っており、中には甘くて飲みやすいものや、誰が飲んでも“良薬口に苦し”というものまであります。
しかし、苦い薬でも不思議とその方の体質に合うものはあんがい苦痛がなく継続できたり、逆においしいですよと言ってもらえたりします。薬の相性を味で判断するなんて面白いですよね。
「効くのに時間がかかるんでしょ?」
確かに、体質改善を目的とした漢方は数か月の時間をかけてゆっくりと効果を実感できますが、こむら返りの特効薬である芍薬甘草湯や、腹満感・胃部不快感に効く六君子湯は数分で効果を発揮します。薬効にまじめに“二日酔い”と書かれている五苓散は、実際に5分くらいで二日酔いの気持ち悪さや頭痛が半減します。(本当は難治性の浮腫や、胃腸炎の吐き気、片頭痛などに使う非常にまじめな薬です)
風邪の引き始めによく効くと有名な葛根湯も、ちょっと風邪っぽいかなと思った時点で飲むと翌日には助かったぁと感じます。葛根湯は、体質の合う人の肩こりにも著効します。
「漢方薬って何で出来てるの?」
漢方は、生薬と言って経験的に薬効があるとわかっている、植物の実や種・皮・根・葉や動物、貝殻、鉱物など自然のものを2種類以上組み合わせて出来ています。みなさんに身近なものに、生姜・紫蘇・山椒・ゴマ・ハッカ・ハト麦・くず湯の葛などがあります。意外なものとして、牡蠣のカラや石膏なども生薬ですし、みかんの皮や桃の種など普段は食べない部位にも薬効があります。面白いことに生姜(しょうが)は生のものを生姜(しょうきょう)、火を通したものを乾姜(かんきょう)と言って、使い分けたりもします。
「なーんだ、そんなの薬じゃないよ。」
と思われるかもしれませんが、生姜や山椒は食べるとおなかが温まることや、紫蘇やハッカを好きな方には清涼感のあるよい香りを実感できるはずです。ポイントは、それを単品で食べるのではなく他にも有効な成分と、混ぜ合わせブレンドすることによって薬効を発揮し、食品から薬にグレードアップするということです。
まだまだお話は尽きませんが、続きはまたの機会に・・・。
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