こちらは グラフ旭川 2019.8月号 の医療情報欄に掲載された コラムです。
お時間のある時にどうぞご覧ください。
腎不全と透析導入までのお話
食べもの・飲み物・薬など口にしたものからできる余計なものや、自分の体の中で産生されたゴミ(老廃物)を捨てないと、身体の中にはどんどんゴミがたまり大変なことになってしまいます。ところが、私たちの身体には、肝心のゴミ捨て場が、“おしっこ”と“うんち”の2か所しかないのです(汗にもごく少量は溶け出ますが…)。
実際には、血液中を流れてきたゴミは、まず肝臓で分解されて無毒化されます。そして、水に溶けやすいゴミは腎臓のフィルターを通しておしっこに、水に溶けづらい脂ものなどは腸から便の中に排泄されるのです。
ゴミの中には、おしっこにも便にも溶けるものもあれば、純粋におしっこにしか溶けられないものもあります。血液検査で、尿素窒素(BUN)、クレアチニン(Cr) という項目がありますが、これがおしっこにしか出せないゴミのたまり具合の指標なのです。どうぞ、ご自分の検診データなどを確認してみてください。
腎臓の機能が弱って、ゴミがたまった状態を尿毒症と言います。こうなると、吐き気や食欲不振、気だるさ、かゆみ、むくみなどが出ます。治してあげるためには、弱った腎臓の代わりとなるフィルターを使って毒を出すしかありません。これが透析治療です。
透析は、専門的には、腎代替療法と言いますが、①腎移殖療法、②腹膜透析、③血液透析 の三つの選択肢があります。
① 腎移殖は、生体腎移植・献腎移植がありますが、併せても国内で年間1500件程度しか行われておらず、30万人以上いる透析患者さんの0.5%しかカバーできていないのが現状です。
② 腹膜透析は、日本ではごく少数しか行われておらず、30万人以上いる透析患者さんの中で3%の1万人ほどしか施行されていません。しかし私たちの住む道北では、遠方から旭川まで通院するのに月に1,2回でよいという簡便さから②を選択している方も他の地域よりは多くいます。
③ 血液透析は、残りの97%の方が選択されており、週に3回、一日4時間前後の治療の継続が必要です。しかし、透析室でどのような治療をしているのか、一般的にはあまり知られていません。今回は、最も多い①についてのお話をメインとしたいと思います。
血液透析の時には、まず2本の太い透析専用の針を腕の血管に刺します。そして、片方から1分間に約200mlもの血液を吸い出し、人口のフィルター(ダイアライザーと言います)で濾過して、きれいになった血をもう一本の針から血管内に戻してあげる治療を繰り返します。
みなさんも経験があると思いますが、普通血液検査の時には、チクッと痛い思いに緊張しながら、何本かの試験官(スピッツ)に血を取られます。しかしそれは、いっぱい採られたと思ってもせいぜい20mlくらいであり、しかも細い針で非常にゆっくりと抜かれます。それに比べて透析の時には、10倍の量の血液を4時間も持続的に抜いては戻してを繰り返すため、表面の細い静脈を刺しても十分な血が引けずうまくいきません。そこで、動脈に針を刺したいところですが(動脈には心臓から1分間に5Lもの血が全身に押し出されるため、多量の血を抜くことが可能なのです)、手首のところの動脈(橈骨動脈)は、やや深いところにあり、実は案外細い血管なので週に3回も太い針を刺すのは大変ですし、傷をつけるとなかなか血が止まらず危険です。そこで、血管内シャント造設術という手術が必要になるのです。
手術の時は、先ほどの橈骨動脈と近くの静脈(一般的には橈側皮静脈)を吻合して、動脈の血が直接静脈に流れるバイパス路を作ります。こうすると、表面の静脈に動脈血が流れているため、静脈に針を刺せますし、透析終了後に止血をするのも安心です。(手術の時は、髪の毛よりも細い糸で、5mmくらいの太さの血管を縫い合わせるため、まさに職人技です。)タイミングとしては、腎不全が進んで近い将来(半年から1年以内くらい)に、透析が避けられないと判断されると、医師から透析の準備のためにシャント手術を勧められます。
さて、透析患者さんはおしっこがほとんど出ないため、週3回の透析の間に飲んだ水の分だけ体重が増えます。透析の時は、除水と言って増えた分の水を抜くことと、たまった老廃物を吸い取ることを同時に行います。もしも3kg増えたら、4時間の間に3kg水を抜かねばなりません。よって、透析の後半には脱水状態から、血圧が下がり、気だるくなり、終了して帰った後も寝て過ごしている方もいらっしゃいます。透析患者さん方に、なるべく負担なく苦痛のない透析を受けていただくためにも、普段から、過剰な毒素と水分を溜めないやさしい食生活が大切なのです。
このように透析は、精神的にも肉体的にも負担のかかる治療ですから、我々医療者は、患者さん方の心のケアも考えながら日々の対応をしております。透析を必要としないためにも、皆さん方もぜひ腎臓にやさしい減塩の食事・運動習慣を身に着けていただければと考えております。
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