こちらはグラフ旭川 2025年8月号に掲載された内容です。夏の暑くなる季節にぜひお読みください。
北海道でも年々夏の暑さを厳しく感じるようになり、昔のようにクーラーを取り付けても使うのはシーズンに数回だけというわけにはいかなくなってきました。旭川でも本年令和7年六月の平均気温は過去最高記録を更新したということですし、温度・湿度ともに本州の夏の暑さと変わらなくなってきました。
夏バテとは、「夏」と「疲れ果てる」を語源として、「夏」と「バテる」を組み合わせた言葉です。夏の高温・多湿によるダメージや、逆にクーラーなどによる冷えに自律神経や体力がついていけなくなり、全身の疲労感・倦怠感、食欲不振・嘔気・下痢などの胃腸障害、発熱・不眠・気力の低下などが組み合わされた結果、夏バテとなります。
しかし、人によって中心となる病態・困っている症状はちがうと思いますので、病院を受診しても必要となる薬や治療はそれぞれに異なるでしょう。もちろん、涼しいところでミネラルを含んだ水分をしっかり補給し、ゆっくりと身体を休めることが基本となるのは間違いありませんが、それぞれの病態に合わせてオーダーメイドの治療を考えるとき、漢方はとても有用です。そこで、今回は夏バテ・熱中症に有効な漢方をいくつか紹介しますので、自分の症状に合うイメージのものがありましたら、ぜひ主治医の先生にご相談ください。
⑰五苓散(ゴレイサン)
五苓散は利水剤とも言われ、体内の水のバランスを均等にしてくれる薬です。実際にアクアポーリン4という細胞の表面にある水の出し入れをするゲートを開けてくれる薬と解明されています。よって、水が枯渇して足りないところには補ってくれますし、水の余っているところからは抜いてくれるように働きます。ですから、熱中症でカラカラになっている方が飲むと、飲んだ水の吸収が早まり回復を早めてくれます。それによって、脱水となっていた脳や全身の臓器・筋肉などに水分が行き渡りますので、頭痛や倦怠感・口渇・胃腸障害・嘔気・めまいなどいろいろなもののバランスが整い楽になってきます。逆に、暑さに負けて水分を取り過ぎてしまい、おなかがチャポチャポするし食欲が落ちてソーメンばっかりとなっている方からは、余計な水分を尿として抜いてくれますので、むくみがとれて胃腸がシャッキリすると思います。
また、炎天下の作業前や趣味のマラソンやウォーキング前に飲んでおくと、余計な汗によるミネラルの喪失なども防いでくれるため熱中症予防になるでしょう。
㊶補中益気湯(ホチュウエッキトウ)
補中益気湯は、補気剤と言って気力体力が低下したときに、まさにそれを補ってくれる薬となります。この中には朝鮮人参など身体を元気にしてくれる生薬や、身体を温めて代謝をよくしてくれるものが入っているため、残暑に夏バテ状態が長引いてしまいからだが疲れきって、消化管機能も衰え食欲低下しているときに元気にしてくれる薬です。疲れがピークの時に栄養ドリンクなどを飲まれる方も多いと思いますが、補中益気湯はまさに漢方の栄養ドリンクと思ってください。ただし少し違うのは、栄養ドリンクは疲労困憊で悲鳴をあげている身体にむちを打って奮い立たせているのに対し、補中益気湯は、身体のエンジンのサビを落としてメンテナンスするように働くため、長い目でみて体調を戻すことになります。柴胡・陳皮(ミカンの皮)など精神的な疲れをとる生薬も入っているため気力・体力共に回復してくれるのです。
136.清暑益気湯(セイショエッキトウ)
まさに夏バテの漢方。「清暑」とは暑さを鎮め体内の熱を冷ますことであり、「益気」とは不足した気を補って体力を回復させることを意味します。人参・陳皮など補中益気湯と重なる生薬も入っていますが、麦門冬・五味子というノドの乾きを潤すものが入っているため、汗をかきすぎて消耗してしまい、口渇・食欲不振・倦怠感などがでたときに有効です。
他にも㉞白虎加人参湯(ビャッコカニンジントウ)は、人参で体力を上げつつ、石膏という強力にからだを冷やす成分が入っているため、暑い中に長時間いてほてった身体を冷やすのに最適です。
また、こむら返りの特効薬として有名な68.芍薬甘草湯は、夏のスポーツで汗をかき疲労が蓄積して足が攣ることを予防してくれます。
(漢方はどのメーカーでも基本的に同じ番号ですので、漢方名を覚えられない時は、数字で覚えてもいいですよ)
しかし、自分で水分補充ができない・意識がもうろうとする・39~40度以上の高体温・汗が全く出なくなったなど重度の熱中症を疑う症状を伴う場合には、危険ですので遠慮なく救急対応を考えましょう。
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